「SHARE P>P>F 〜自由でシェアな見本市〜」イベントレポート シェアのあり方はどう変わっていく?

暮らしを自由にするオフィス「12 KANDA」のオープン1周年、そして同じく神田エリアにある、2015年の開業から多くの人に愛されたシェア型複合施設「the C」のクローズに際して、合同開催された「SHARE P>P>F 〜自由でシェアな見本市〜」。
3月14日(金)~17日(月)の4日間にわたって2つの物件の歩みを振り返り、“シェア”を自由に捉えなおすことを目指した本イベント。不動産関係者から一般の方まで、来場者数は500名以上となり、リビタの取り組みに関心を寄せてくださっている多くの方々にご参加いただきました。
今回は、物件の入居者や地域、そして外部パートナーも巻き込んだ大規模なコラボイベントとあって、これまで以上にコンテンツが盛りだくさんとなった当日の様子をご紹介していきます。
シェアの過去、現在、未来を考える見本市
イベント名の「P>P>F」とは、“past”“present”“future”を表したもの。シェアの過去、現在、未来を考えていくという意味合いが込められています。
これまで、住宅やオフィス、シェアハウスなどを企画・運営してきたリビタが、「住む」や「働く」といった枠を超え、実験的にアートや食などと掛け合わせながら、より自由にシェアというものを捉えていく見本市として企画されました。
イベントの企画側でも参加された「12 KANDA」の入居企業様へのインタビューでは、入居の経緯やイベントの参画内容についてお聞きしました。
オフィスに対して“働く”に留まらない、自由な可能性を求めている方はぜひ参考にしてみてください。
【イベントスケジュール】
実際のイベントでの様子とともに、コンテンツの一部をご紹介します。
まずは「the C」。すでにすべての入居者が退去済みの「the C」では、アート作品の展示が行われていました。
手がけたのは、東北芸術工科大学のアーティストプログラム「TUAD INCUBATION PROGRAM」(通称「T.I.P」)に選抜された学生たち。
リビタと新たなプレイヤーとでつくる実験的なプロジェクトとしてスタートした、このアーティスト・イン・レジデンス企画。
5人は閉館後の「the C」に2週間滞在し、その間、暮らしと制作の空間をシェアすることに。これまでの入居者たちの物件に対する思いを感じ取りながら、東京・神田という普段とは違う環境で得たインスピレーションをもとに作品を制作しました。
また、9階のラウンジからは、紅茶のいい香りが。「take idea give tea」と名づけられた、ちょっと変わった来場者参加型の企画です。
その場でシェアの未来を妄想し、アイデアを提案してくれた方へ紅茶を提供。紅茶を淹れてくれたのは、埼玉出身のティーデザイナー・紅茶王子。
入居者による寄せ書き展示に加えて、イベント来場者の方にも壁やに寄せ書きをしてもらいました。
また、「12 KANDA」の2階のラウンジでは、リビタのイベントではおなじみの「建材ワークショップ〜小さなリノベーション体験〜」を実施。建材サンプルや端材などを使っておうちやアクセサリーをつくる人気コンテンツです。
土日が雨だったこともあり、こちらの建材ワークショップを目当てに遊びに来てくれたご近所の親子も。お子さん以上に、親御さんが熱中している様子も見受けられました。
そして、今回のイベントがひと味違うのは、入居者企画があること。
「せっかくイベントをやるなら、入居者が自由に施設を使い倒して、自己表現してほしい!」そんなリビタの思いから、今回は「12 KANDA」の入居企業・テナントの皆さんにも企画側としてご参加いただきました。
いつもは地下1階の「キッチンチカシツ」エリアで出店しているテナントや、「12KANDA」の1階のハンバーガーショップ「Hangry Joe’s」の系列会社が運営する三軒茶屋の生ドーナツカフェ「POTERI BAKERY -TOKYO-」が特別に屋台で登場。
今回のイベント期間限定メニューの販売もあり、普段からよく利用している「12 KANDA」入居者やリビタスタッフも大注目でした。
エントランスに並ぶおいしそうなお菓子やスコーン、サンドイッチたちは、来場者が立ち寄りやすい空間づくりに一役買ってくれていた様子。土日はどちらもあいにくの雨模様でしたが、たくさんの方が立ち寄ってくださっていました。
地下では「JAMミュージックスクール」によるドラム・ギターの体験ワークショップも。
「楽しく学ぶ」をコンセプトに、近隣住民や会社帰りのサラリーマンの方々も通うこちらのスクール。ワークショップは予約不要、飛び入り参加OKとあって、お子さんから大人まで楽しんでいただけていました。
企画参加を経て感じたこととは──入居企業へのインタビュー
今回「12 KANDA」入居企業として、企画側で参加してくださった株式会社FCNの代表・鈴木茂樹さんに、企画の経緯や当日の様子について、お話を聞かせていただきました。
IT事業を中心に地方創生やファンマーケティングにも取り組んでいる株式会社FCNさま。東京・有楽町と大阪にオフィスを持ちつつ、昨年3月から新規事業チームの方々に「12 KANDA」にご入居いただいています。

株式会社FCNの代表取締役社長・鈴木茂樹さん 12KANDA内「LDK」にて
地方創生事業において主となる、“食”と“職”の2つの課題に取り組む株式会社FCNの皆さんにとって、食×ビジネスをテーマにした「12 KANDA」には、内覧時から親和性を感じていたそう。
また、個性豊かな飲食店が揃っていて物件内で完結できる点、キッチン付きの休憩スペース「LDK」やラウンジといった共有部で、ほかの入居企業との交流や共創が生まれそうな点も、惹かれたポイントだったと言います。実際に入居から1年の間に、食を通してコミュニケーションが生まれているのだとか。
「うちの会社のメンバーはたまに『LDK』のキッチンで調理をしているんですが、ほかの企業さんから声を掛けていただくことも。それをきっかけに、企業合同でお鍋を囲んだこともありました。皆さんからは食の会社だと思われがちで、じつはITの会社なんですとお伝えすると、驚かれることが多いですね(笑)」
今回のイベントでは、“シェア”と自社の事業を掛け合わせて2つの企画を実施いただきました。
1つは、「和歌山『藤井の里』味わい祭り〜地方×食を楽しもう!〜」と題し、地方創生支援をしている和歌山県産のキウイ、不知火(しらぬい)、八朔(はっさく)、レモンをそのまま、もしくはジュースやロールケーキにして提供。これらは、味はおいしいのに廃棄されてしまう規格外フルーツたちです。
企画側として参加することになったのは、リビタとの何気ない雑談からだったそう。
「関西で規格外フルーツの流通を図ろうという取り組みもやっているところだったので、『首都圏でもやってみたい』と何気なくリビタさんにお話したところ、1周年のイベントの構想についてお聞きして。一緒にやれたら面白そうですね、ということで実現に至りました」
当日は、鈴木さんや社員の皆さんが実際にキッチンに立ち、来場者の方々と積極的にコミュニケーションをとっていただいてる様子が見られました。ふらっとご近所からいらした家族連れも多く、フレッシュなフルーツは子どもから大人まで大人気!
2つ目の企画は「the C」の会場にて、その日顔を合わせたメンバーと限られた時間でプログラム開発をするハッカソンを実施。テーマは「AI×シェア」です。
「エンジニアでなくとも、誰でも生成AIを使うことで『あったらいいな』を実現できる」ということを知ってもらいたいと企画したこのハッカソンでは、2チームに分かれて“食”もしくは“職”に絡めたプログラムを構築。
鈴木さんの声掛けもあって、「12 KANDA」だけでなく、ほかの12シリーズの入居者の方々、取引先の皆さんなど、幅広いメンバーが集まりました。
ほぼ初対面からスタートしたものの、どちらのチームも無事時間内に完成!最後に行われた発表会では、お互いのチームをたたえ合うあたたかい拍手が起こりました。
今回のイベント参加を通して、新しい展望も見えてきたと鈴木さんは言います。
「地方創生の取り組みのなかで人を巻き込んでいくには共感、そしてそのための思いや視点のシェアが不可欠だと思っています。それをいかに広げていけるかをテーマに、今回取り組ませていただきましたが、想像以上の手応えを感じられました。
今まではご挨拶する程度だった『12 KANDA』の入居者の方々とも、これまで以上に関係性を構築できましたし、新たに出会った方たちと事業の中で新しく一緒に取り組めそうなことも見えてきて、非常に有意義な機会だったと思います。今度はまた夏に、シェアを軸にした今までにないお祭りをやってみたいですね」
暮らしを自由にするとは?シェアが持つ可能性と未来について
また、期間中には「12 KANDA」と「the C」それぞれの物件に縁の深い方々をお招きし、2つのトークセッションを開催。それぞれのハイライトを簡単にご紹介します。
「12 KANDA」の2階Loungeで開催された14日(金)のトークのゲストは、「暮らしを自由にするオフィス12」シリーズの設計を手掛けた大野力さん(「12 KANDA」を設計)と納谷新さん(「12 SHINJUKU3CHOME」「12 NISHISHINJUKU」を設計)のお二人。物件の特徴や設計のポイントから最近の働き方、12シリーズのブランド名でもある「暮らしを自由にする」とは何かまで、幅広く語っていただきました。
大野さんも納谷さんも、コロナ禍以降の暮らしの変化について、「移動が増えた」と話します。それは自然のある場所だったり、地方であったり、別の拠点であったり。「明確な目的を持たずとも、単純に場所を変えることがリフレッシュになる」と感じているそう。
そして、トーク終盤にはあらためて「『暮らしを自由にする』とは何か」という問いに。少し抽象的なお題に対し、ゲストのみならず全員で考える時間になりました。
大野さん:「今って、多くの人の生活がある意味均質化されてきていると思うんですよね。そのぶん、ゆらぎやノイズなど、整理しつくされていないプリミティブなものを、さまざまなシーンで求める人が増えているのかなと。それが僕の場合は、自然に触れることだったりして。そういうゆらぎを、どれだけ暮らしの中に取り入れられるかが大事なのかなと思います」
トーク終了後には、「12 KANDA」1階のお酒も飲めるハンバーガーショップ「Hangry Joe’s Tokyo」にて懇親会。12シリーズ入居者・設計者・不動産関係者などさまざまな方に来場いただきました。
そして、17日(月)のトークは「the C」にて実施。「the C」のリノベーション時に設計を担当された南條設計室の近藤裕幸さん、シェアハウスの元入居者の西澤さんのほか、リビタから企画担当・井上聡子さん、物件担当・加藤陽介さんがスピーカーとして登場。
「the C 解体新書〜企画・コンバージョン手法からコミュニティ運営まで徹底解剖〜」と題し、山中散歩さん司会のもと、設計者、企画者、コミュニティ運営者、入居者それぞれの視点で掘り下げていきました。
クロージングにかけて、オープンスペースやシェアスペースが持つ価値や可能性についての話題に。

左から「the C」元入居者・西澤さん、運営担当・加藤さん、イベント司会担当・山中散歩さん
「the C」をはじめ、シェアプレイスの運営に関わってきた加藤さん、そして「12KANDA」を含めシェアプレイスやシェアオフィス等の企画を担当してきた井上さんは、今後についてこう語りました。
加藤:「コロナ禍を経て、あらためて社内で“シェア”について自由に議論し、先進的な取り組みを視察し、捉えなおすことをやってきました。そこでやはり、個性豊かな入居者の方々の存在が、シェアの今後の方向性におけるヒントになるのではないかなと。
皆さんが持つ実現したいこと、やってみたいことを現場で拾いあげながら、リビタとして何ができるのかを一緒に考え、取り組んでいく。不動産の貸主/借主という関係性を溶かし、関わり方をデザインしていくことが、より良いコミュニティの醸成に繋がっていくのではないかと思っています」
井上:「もともと住宅をメインに扱ってきたリビタが、働く場所に住まいの要素を掛け合わせると、何か素敵なことが起こるんじゃないかという思いから、『12シリーズ』を企画してきました。
おかげさまで、入居者の皆さんが自由な発想で楽しく使ってくださって、そこから新しい取り組みが始まる流れが生まれているのがすごくいいなと思っていて。今後、“働く”や“住む”といった領域を越境し、さらに新しいことが可能になる場が、世の中にさらに増えていくのではないかと感じています」
このトークイベントと懇親会をもって閉幕した「SHARE P>P>F 〜自由でシェアな見本市〜」。
過去から現在、そして未来へ。多くの方に愛された「the C」のシェアのあり方のDNAは「12 KANDA」へと受け継がれ、今回のイベントを通して見えてきたヒント、生まれた繋がりを糧にさらなる自由なシェアのあり方を探求していきます。
「12 KANDA」では、単に働くための場所としてだけではなく、さまざまな人々が集まることで、偶然の出会いやアイデアの化学反応が生まれる場として、今後ますます入居企業に新たな視点やビジネス機会といった多様な広がりが期待できそうです。
この記事の関連施設
12 KANDA
プロジェクト記事物件詳細「暮らしを自由にするオフィス12」Instagram
the C
プロジェクト記事シェア型賃貸住宅「シェアプレイス」HPシェア型賃貸住宅「シェアプレイス」 Instagram
writing&interview_ むらやまあき photograph_ 古末拓也
取材・撮影 :2025年3月